【考察】20センチュリーウーマンをみて「ひとり親」への人的支援を考える
①母と息子をテーマにした映画
「20センチュリーウーマン」という映画を見ました。あらすじは、1979年のアメリカ、南カリフォルニアを舞台にした、シングルマザーの母親と思春期の一人息子を中心に同じアパートに住む、ジェイミーの幼馴染で年上の彼氏との妊娠を疑うジュリー、お姉さんのような赤髪の写真家アビーや、無骨で無口で木を掘ることに関心のあるマークが母親(ドロシー)のアパートで一緒に生活する様子を描いたものです。
監督自身の15歳の時の体験を元に描いた作品だそうで、母親の不器用な愛情と息子への関わり方、少年の性や女性という存在に対する関心、退廃的なヒッピーやダンスクラブ、タバコの吸い方やその当時の音楽やダンスなど、その当時の息遣いが本当にリアルで、各個人の半生を振り返るシーンもあるのですがニクソン政権やレーガン大統領といった時代背景も絡んで興味深い映画でした。
さて、本作品に登場する母親は、一人息子の成長を見守ると同時にその過程で起こる、理解が難しい行動やトラブルに心を悩ませながら日々を過ごしています。思春期に差し掛かるまでは、自分のコントロール下で息子の行動も把握できていたのですが、思春期に入ると友人達と危険な遊びをやったり、自分には馴染みのないミュージックやナイトクラブでのダンス、まだ早いと思われていた性との関わりで女性に対して新しい視点を養っていく息子の変化に本作の母親は戸惑います。
しかし、その全てを否定して自分で息子をコントロールしようとするのではなく、幼馴染の少女やお姉さんのような役割の女性に息子の相談や導き相手になって欲しいと頼み、自らも息子を理解しようと積極的に息子に関わる人物やその趣味等にチャレンジします。本作の母親は離婚しており、一人息子を育てるという環境ではあったものの、このように父親がいない中でも、周囲の人との関係性を活用しながら、もどかしさもかかえながら、息子をはじめとした周囲の人達へ影響を与え続けます。
②ひとり親への人的支援制度の不足
上記のように母親と息子のみの関係性の場合、異性である息子が成長するにつれ、息子のことがわからなくなったり、ぶつかったりしてくることがあるのですが、そこで自分が今まで果たしてきた母親としてだけではなく父親の役割も持ちつつ息子に関わらなくてはという認識も意識下にはあるのでしょう。
私のイメージで、象徴としての母親の役割は「無償の愛・守り慈しむ・食事や育児の主体・優しさ・暖かさ等」に対して、父親の役割は「社会的規範・楽しさ・厳しさ・生きる糧の獲得等」といったことがあります。この全ての役割を一人の人間が背負うにはあまりにも負荷が大きすぎて、現実的に男女どちらかの性別を与えられている我々にとっては、片方の役割を果たすことでも精一杯です。
子供の発達段階において、このような、父親と母親の役割を担ってくれる存在が本来的な成長にとっては必要だとすると、母子家庭等の「ひとり親」においてはそれを代替的に担ってくれる外部の存在が必要となってきます。もちろんそれは、母親の親や家族、友人であったり近所の人であったり、あるいは教育関係者かもしれませんが、ただでさえ一人で仕事もしつつ育児もしているひとり親にとっては、このような外部の繋がりを能動的に探すだけでも多くの困難を伴います。今作の映画に登場する母親は、自身が経営するアパートの住人の助けを借りつつ能動的に関わっていくことができていましたが、誰しもがそのような繋がりを構築できるとも思えません。再婚して新たな父親(母親)との家庭を作っていく方向が本来的かとは思いますが、それまでの期間が空いたり、実現困難な場合も多々あるかと思いますので、日本においても現状以上に精神的な繋がりも含めたひとり親に対する支援が望まれます。
もちろん社会のシステムとして日本にも社会保険等において金銭的な免除制度や負担軽減があったり、児童扶養手当等の給付金もありますが、上記のように子供の成長に必要な人間関係といった面での保障は多くないために、各個人の置かれている周囲のサポートの次第で実際の養育環境が大きく異なってきているのが現実としてはあります。(政府の施策で相談事業や一時的なヘルパー派遣等はありますが、広く活用されているとはいえず、持続的な人的支援ではありません)
このように持続的な人的支援を実際の制度として整えるのは難しいところがありますが、ひとり親が増えている昨今(直近25年間の推移)においては民間の団体も含め、社会の繋がりを簡単に利用できる制度として整えていくことで、より選択肢の多い自由な社会へと繋がっていくのではないでしょうか。
③地域ホームステイのススメ
具体的なアイデアとして、地域で活用できるホームステイサービスなんかがあるかと思います。子供が外国に留学する際にはホームステイが一つの選択肢になろうかと思いますが、そンなイメージです。ひとり親が住んでいる地域において、簡単にWEBで登録できるボランティアを募り、しっかりと対面した上で、子供が近所にホームステイすることで、自分の家庭だけでは足りない学びを得ることができると同時に、その繋がりは近所であるからこそ、ホームステイ後も持続的に続いていくことが期待できます。昔の村社会のように、地域ぐるみで各家庭のサポートをすることは無理でも、特定の、あるいはいくつかの家庭同士の制度的な繋がりでのサポートなんかはできるんじゃないかと。もちろん、前提として安心安全なことが絶対条件ですし、簡単簡便に手続きができることも必要です。
上記のような例として調べてみたところ、実際に札幌で近所に泊まるホームステイ事業を過去に開催した例が出てきており、各自治体で推進しているところもあるそうです。事業コスト自体が低い上に、地域コミュニティの活性化にもつながるプログラムとして、自治体でも受け入れられているそうです。(2010年の例)このような制度を広く整えていくことも、一つの方向性かもしれません。
いずれにせよ、政府が働き方改革を進めていく中では、まだまだ待機児童の問題もありますし、ひとり親において仕事と家庭の両立をしていくことは思った以上に疲弊していってしまう現状もあります。保険や助成金のみならずに、こうした人的支援制度も含めて、社会保障として整備していくことで、政府が目指す労働力の底上げにより成長への道筋が開けてくるのではないでしょうか。
【藤井四段】連勝ストップしたけど将棋界の記録にまだまだ挑めそうな話
①藤井四段と佐々木五段の熱戦
藤井聡太四段の連勝記録がついにストップしてしまいましたね。30連勝目前にしてあと一歩というところでしたが、14歳という年齢にして本当にすごい記録を作ったと思います。今回勝った佐々木勇気五段は、イケメンやスイス生まれということも注目されていますが、竜王戦の決勝トーナメントへの出場者が決まった段階で、佐々木五段は藤井四段の対局も見学するなどして、前もって研究を積んでいたとのこと。以前の記事で藤井四段の強さの一因として、対戦相手は藤井四段と初めて対局することでその手筋を経験していことによる未知の部分が多くなってきて負けてしまうことも考えられると書きました。今回の佐々木五段は、過去に藤井四段との対局もある上に、しっかりと最新の動向まで含め藤井四段の研究を行い、更に先手番で自身が得意とする形を作ることにより、未知の部分のアドバンテージ要素を削ることで、押し切った勝利でした。
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実際の試合は合掛かりから、合横歩取りという、定石も少なく実力が必要な力戦の展開に積極的に持っていって序盤、中盤、終盤も佐々木五段が冷静に差し切り、藤井四段は様々な惑わすような手を打ち、形成を逆転しようとしていましたが、力及ばずといった展開でした。
佐々木五段は昨年の最多対局数(65局)を指した棋士であり、羽生三冠や渡辺竜王にも勝っており、勝率も高い若手のホープですので元々の地力も相当なところで、それに加えて藤井四段対策を万全にしたことが今回の勝利に繋がったのでしょうちなみに佐々木五段は次の六段昇段まで、今回の勝利であと「2勝」になりましたので、近いうちに佐々木六段に昇格することは固いかと。今後の佐々木五段の動向(特に竜王戦)も気になるな〜。
残念ながら連勝が止まってしまった藤井四段ですが前人未踏の大記録を作ったことに間違いはないので、気持ちを切り替えてこれからの活躍に期待します。個人的には今年の竜王になるチャンスが無くなってしまったのは寂しいですが、並み居る強豪を倒してタイトルの中でも最高峰の竜王戦の決勝トーナメントという大舞台に出場しただけでも、とても大きな価値かと。将棋の最も強い駒である「飛車」が成って更に強く成ったのが「竜王」。その名称を冠して、優勝賞金も4320万円と最も高く、名人位と並んで(またはそれ以上の価値をもって)権威があり、いわば将棋世界の最高峰のタイトルとも言えるので、藤井四段には次回も負けずに挑んで欲しいです。(竜王戦の予選であるランキング戦の組も6組を優勝したので、次回からは5組に上がります)
ただし、後述のようにまだまだタイトルや記録のチャンスはあるので今後も目が離せません。
※余談ですが、竜王戦の6組にはアマチュアの枠がなんと5枠もあります。並み居るプロ棋士達相手に、タイトル戦を戦えるのは竜王戦と棋王戦だけで、アマでも勝ち進んで行けば竜王になることも不可能ではありません。(本気で将棋頑張ってみようかな←無謀)
②将棋界の各種記録と藤井四段が挑めそうな記録
さて、将棋界には様々な記録がありますが、日本将棋連盟がまとめている主な歴代ベスト記録には以下のものがあります。(敬称略)
◆年度勝数
⇨1位 羽生善治 68勝 (2000)
2位 羽生善治 64勝 (1988)
3位 森内俊之 63勝 (1991)
◆勝率記録
⇨1位 中原誠 85.45% ※47勝8敗 (1967)
2位 中村太地 85.11% ※40勝7敗 (2011)
3位 羽生善治 83.64% ※46勝9敗 (1995)
◆連勝記録
⇨1位 藤井聡太 29連勝 (2016〜2017)
2位 神谷広志 28連勝 (1986〜1987)
3位 丸山忠久 24勝 (1994)
◆タイトル獲得回数
⇨1位 羽生善治 97回獲得 (129回タイトル戦登場)
2位 大山康晴 80回獲得 (112回登場)
3位 中原誠 64回獲得 (91回登場)
◆同一タイトル通算獲得
⇨1位 羽生善治 24期 (王座)
2位 大山康晴 20期 (王将)
3位 大山康晴 18期 (名人)
羽生善治 18期 (王位)
(4位以下の記録は下記参照)
こうしてみると、羽生善治三冠の強さが際立ちますね。歴代の記録のほとんどに名前があり、未だに更新し続けているものもあります。永世タイトルなんかも羽生三冠が今年の竜王になれば7大タイトル全てで永世の称号を手に入れることになります。
藤井四段は既にこの大記録の中で「連勝記録歴代1位」を達成していますが、他にも「年度勝数」「勝率記録」なんかにもこのまま勝ちを重ねていくとランクインしていきそうな勢いです。特に勝率記録は現在1敗はしましたが、19勝1敗の勝率95%になっていますので、このペースを保ち続ければ、歴代一位の85.45%を超えてくる可能性もありそうです。(将棋の年度は4月〜3月なので4月以降の成績)
ただし、タイトルトーナメントなどは、勝ち進めば勝ち進むほど今回の佐々木五段のような強い相手と当たることになりますので、その時に藤井四段の真価が問われることに。まだ、来年の3月まで9ヶ月もありますので、長い道のりですが一つでも多くの記録に期待が寄せられています。
ちなみに、そのほかの記録としては、最速のタイトル獲得と、史上最年少のタイトル獲得も話題に上っています。いずれも現在A級でトッププロの屋敷九段がその記録を保持していますが、藤井四段はまだ14歳なので、最年少タイトル獲得まではまだ余裕があ流状況。ただし、最速でのタイトル獲得に関しては竜王戦に敗れたために、1年10ヶ月以内に取るために残すチャンスはあと4回となります。(2018年棋王戦、王将戦、叡王戦、棋聖戦)
◆最速タイトル獲得者
⇨屋敷伸之 1年10ヶ月(プロ入後)
◆最年少タイトル獲得者
⇨屋敷伸之 18歳6ヶ月
これまでの対局を見ている限り、藤井四段の実力としてはA級棋士達に近いところまで来ている印象もありますので、このチャンスをものにして最速タイトル獲得者になる可能性もないとは言い切れないかな。
ちなみに、毎年度末に将棋連盟が「将棋大賞」として活躍した棋士達を表彰するのですが、少なくともそのうちの「新人賞」と呼ばれる選考で選ばれる部門には藤井聡太四段が、これだけの活躍ですから選ばれる確率が高いんじゃないかなと、個人的には予測。
いずれにせよ、全力で陰ながら応援しております!!!
藤井聡太四段おめでとう!いずれは打倒AIなのかな
①藤井四段無傷の29連勝で新記録を達成
6月26日の将棋竜王戦本戦トーナメントにおいて、藤井聡太四段が増田康宏四段に勝利し、デビューから29連勝を飾りました。これまでの最高が28連勝だったため、今回は歴史的勝利ということで、対局室や記者会見には大勢の報道陣が詰めかけ、各媒体では速報としてこの新記録を伝えました。
私も先日のブログでも藤井四段の強さを記事にしましたが、今回の対決でも圧巻の中盤〜終盤力を発揮して、寄り切っていました。
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実戦では、角換わりになりそうなところを、増田四段が角筋を止めて定石の型にはまらないような力戦を展開していきました。序盤ではやや増田四段が優勢と解説のプロ棋士や将棋ソフトでも判定が出ていたのですが、角と桂馬を利用して絶妙の手筋で王将に迫っていく将棋内容は、兎にも角にも観ている人の予想を超えるものでした。終盤になるにつれ、優位を固めていき最後は危なげない手筋で増田四段の反撃も振り切り勝利。力戦で勝つのは本当に実力のある証拠ですね。
羽生善治三冠をはじめとした、業界のトップ棋士達からも賞賛のコメントが出されており、今後はこうしたトップ棋士達との対局も楽しみになってきます。
②藤井四段の強さと今後の対戦
いやー、前回も書きましたが強いプロ棋士達の中で、29連勝という歴史的な勝利、しかも今回は竜王戦の本戦トーナメントということで、5組で勝ち上がってきた増田四段を倒しての勝利になりますから、本当に強いの一言です。
ちなみに増田四段も16歳でプロになっており、藤井四段が入って来る前は現役最年少でのプロ棋士であり、これまでのプロでの対戦成績も勝率7割を超えており、羽生三冠に続く勝率となっていました。そんな増田四段との力と力のぶつかり合いを制した、藤井四段の強さにはただただ驚くばかり。
各方面の解説でも言われていますが、藤井四段は悪手(形成が一気に悪くなり敗北につながる手)をほとんど指さずに、最善手ばかりではないかもしれませんが、それに近い手を打ち続けていることも強さの要因となっています。14歳という年齢を考えると、自分が勝てそうな時には攻めることばかり考えて、受けが疎かにになりそうなものなのですが、彼は冷静に受けつつ勝ち切る姿勢が一貫してブレずに、トップの将棋ソフトの内容が全て頭に入っているようなダイナミックな将棋を指していますね。
さて、これで竜王戦の次戦では4組優勝の佐々木勇気五段になります。16歳1ヶ月という藤井四段と渡辺竜王に次ぐ史上3番目の速さ(現行三段リーグ制導入以降)でプロになっている佐々木五段は現在プロ5年目の若手のホープと目される存在で、7割近い勝率を誇っています。藤井四段がここに勝てば、あとは「1組」と呼ばれるトップ棋士達との戦いが待っています。
(日本将棋連盟より)
③業界のイノベーターとして
藤井四段のような業界の歴史を塗り替えていく存在は、それ自体が新しい風を吹き込んでニュースになるとともに業界の再活性化を促し、それまでの慣行や常識を覆していき新しい歴史を作っていくイノベーター的な存在です。世間においてここまで注目されるのは羽生善治三冠が次々とタイトルを獲得して行った時以来でしょうし、中学生でありながらその羽生三冠にも勝利し、今回新記録の29連勝を成し遂げた藤井四段は業界においても良い方向の変革のシンボルとして今後も注目され続けていくでしょう。仮に勝ち続けていってトッププロ相手でも敵なし状態になった時に、次にAIとの対戦も期待されてくるとは思いますが、現時点ではあまりAIとの対局は現実的な可能性としては考えていないようです。
個人的に対局を見ている限り、対人戦においてはその悪手の少なさ・驚異的な終盤力・冷静な受けと攻めのバランスをみる限り無類の強さを今後も発揮していくだろうなと思いつつ、ミスが限りなく少ないAIとの対局ではまだ勝ちきれないのかなとも思います。しかし、彼がまだまだ伸び代のある年齢だということと、プロでも予想しない創造的な手を繰り出せる棋士であることを考えると、もしかしたらトップAI相手にも勝ち越せる、そんな人間の可能性を感じることのできる棋士だと感じます。
というわけで藤井四段、今回の新記録達成と竜王戦トーナメント勝利おめでとうございます。一人の将棋ファンとして今後の展開が楽しみすぎる。。
淡い思い出のブルネル大学よもう一度
こう聞かれた時に、脳裏によぎったのが学生の時に2週間だけ行ったイギリスのヒースロー空港近くの大学の、、はてなんだっけ。
というわけで必死に記憶を辿り思い出したところ、ロンドンの西部に位置する王立のブルネル大学(Brunel University London)でした。
Welcome to Brunel University | Brunel University London
①ブルネル大学あれこれ
場所は下記のようにロンドンの西側に位置していて、ロンドンまでは約1時間といったところでしょうか。近辺にはアップルやコカコーラなどの大企業も集まっています。
学生数は2015年時点で学部で9800名、院生で4300名、合計15000名弱と、日本だと東京大学くらいの人数になります。ただし、イギリスの人口は6500万人と日本の約半分なので、そう考えると中々の規模を誇ります。
ちなみにイギリスの大学進学率は56%と日本の63%(いずれもUNESCO統計)よりもやや低くなっています。ただし、これは統計元によっては数値が異なっており高等教育の定義の違いによるものになるとのこと。なお、イギリスの学部は3年、大学院は1年で卒業が可能なのでそこら辺も日本の大学との違い。
さてブルネル大学に戻りますが、IT分野などの産学連携を中心に幅広い専攻があり、工学系の評価は高くなっています。ランキングでみても、QSで世界345位(18年)と日本だと神戸大学がそのあたりなので、まずますの評価。また、積極的に留学生も受け入れており、2000人以上の留学生がいます。
②英語と日本人の類似性を感じた体験
というわけで前置きが長くなりましたが、このブルネル大学の寮に英語を学ぶ短期研修的な扱いで2週間ほど滞在していたことがありました。キャンパスは下記のように緑もありつつ、近代的な建物が並んでいました。
こんな大学で、英語を学ぶプログラムに参加していたのですが、このプログラムには日本だけではなく、スペイン、フランス、ポーランド、チェコなどのヨーロッパの各国からも学生が集っていました。その当時高校生だったので、外国の人は皆英語ができるとなぜか思い込んでいた私に、ヨーロッパ人でも英語を勉強するんだ、なるほどと印象に残ったことをおぼえています。ただその基礎素養といいますか、同じルーツを持つインドヨーロッパ語族だからとでもいいますか、彼らは英語に対してそこまで抵抗をもっておらずに、すんなりと馴染めている様子でした。
各国の生徒とも自国の友達とつるむことが普通なのですが、特に日本人はその傾向が強かったような気がします。考えてみればこれもあたりまえの話で、日本が島国で村文化で、とか言葉が違いすぎるとか、そんな理由もあるにはあるけれども、まず人間は自分と姿形が似ているものに対して安心感と親近感をおぼえるために、必然的にその人たちでまとまるのだな〜と。
視覚の情報は想像してる以上に行動に影響を与えていて、例えば道端で自分より小さなお年寄りが困った様子で歩いてきたら、警戒心などほとんどなく「どうしました?」と言える気がしますが、自分より大きくて強そうな黒人が困った?様子で向かってきたら、警戒しながら距離を気にしてしまいます。
外国への留学で日本人同士はまとまりすぎて、他と干渉しないなんて話はよく聞きますが、馴染みのないストレスを感じる環境においては視覚的に自分と似たものへ回帰していく類似性の法則が強く働くのでしょうね。(もちろん自分には足りないもの、持っていない異文化への憧れを抱いて、相補性がうまく働いた結果そこに溶け込んでいく人もいます)
③青春チックな思い出
私はこのプログラムでの授業の合間に、カラフルなパーカを着て座って本を読んでいたところ、なぜか興味をもってくれた東ヨーロッパの女性と仲良くなり、トキメキを覚えつつ、それから毎日ベンチでたくさん語り合ったり、一緒にみんなでパーティをしたのが本当に良い思い出でした。その人が日本の文化に興味があり、英語も堪能だったので自分にとっても助かりましたし、異性ということで思春期的に意識したのもあったのかもしれません。会話の内容など詳細は思い出せませんが、最後の日に私が日本に帰る際の早朝に、泣きながらバスを見送ってくれたことは鮮明に記憶にあります。。
なので、大人になってからあの場所にもう一度行ってみたいな、、と思いつつもなかなかイギリスまで足が伸びないのですが、いつか行けたらいいな〜〜。(いつかと書いてる時点で実現しなさそう。。)
藤井四段の強さとプロのハードル
藤井四段のプロでの連勝記録が話題になっています。6月23日現在新記録タイの28連勝と並み居るプロ棋士相手にその勢いはとどまるところを知りません。
①将棋ソフトAIとその手法
上記の記事では終盤がもともと強かったことに加え、AIを利用した対局で序盤と中盤の大局観も養っていったことが現在の強さを形作っていると言われています。
藤井四段が学習に使用しているAIはわからなかったのですが、Ponanza等のような将棋ソフトが近年トッププロ棋士をも上回る成績を叩き出しています。
その仕組みは「評価関数」と呼ばれる駒の価値に評価をつけそれを利用して盤面の形勢判断(有利不利)を導き出し、自身が最も有利(評価が高くなる)手を打っているそうです。現在の将棋ソフトに大きな影響を与えたBonanzaが2006年以降に「ボナンザメソッド」と呼ばれる大量のプロ棋士の棋譜から教師あり学習として機械学習を行なったことで、飛躍的に大局観を向上させました。
その結果、ドワンゴの電王戦などで将棋ソフトはプロ棋士に勝ち越しています。
将棋でも囲碁と同じように、過去のプロ棋士の棋譜(5万譜程あるそうです)から学習し、ソフトの性能を上げ、強くなったソフト同士を対戦させることによりデータを蓄積して学習を進めていく手法が取られており、最新のものではディープラーニングの技術も使われています。
②藤井四段はなぜプロ棋士に連勝できるのか
藤井四段が強くなった経緯として、詰将棋で終盤の力を伸ばし、将棋ソフトAIも利用することで大局観を養ったとありました。私も小学生の時に将棋が上手くなろうと、詰将棋やコンピューター対戦に挑戦したことがあり、詰将棋は練習すればしするほど終盤での棋力に生かすことができます。また、序盤や中盤の指し手は定石やプロ棋士が書いた攻略本を参考に学んでいました。そのように学習していっても、経験のある強い人との対局になると、終盤での読みの力が優っていても中盤での指し手が経験のある人に対しては負けていました。(もちろん終盤の力不足もあるけれども)
考えるに、そうした序盤中盤で必要とされる大局観を養うに、従来からある定石やプロ棋士の書物をいくら完璧に学習していっても、それ以上にはなれないということがあります。プロとの対戦では、そういったことが全て身についていて、さらにその中で切磋琢磨して手を磨いてきたプロ相手に過去の定石を覚えただけでは勝ちきることは難しく、プロが予測しない創造的な好手を指すことができて、初めて勝機が見えるのです。
藤井四段は、成長過程において頭の回転や空間把握能力・先を見通す分析力を飛躍的に高めていく中で、AIを学習の一環として利用していました。AIと対戦することによって、それまでの常識にはない創造的な手や不確実な盤面でも負けない手をさせるようになったと考えます。自分よりも、そして一定のプロよりも強いAIで研究を続けることによって、実際のプロとの対局では怯むことなく冷静に大局観をもって指し続けているのでしょう。加えて多くのプロは藤井四段と初対戦ということも、連勝の一因になっていると思われます。
③プロ棋士のハードルの高さ
それにしても、プロ棋士になることのハードルは高く、アマチュア四段以上のレベル(アマチュアの中で上位3%)で奨励会に入会できて、その奨励会の中で半年に2人しかプロ棋士(四段)に昇格できず、それも奨励会の中で1%しか行くことができない狭き門です。
ようやくプロになっても、各順位戦・タイトル戦に挑戦していきますが、そこでトップに立てるのはほんの一握りです。(最高位のA級はわずか10人)
このような、トップ級のプロ棋士が集まる世界で連勝していくことは、並大抵のことではなく、だからこそニュース価値も大きいわけです。野球のピッチャーで例えると高卒ルーキーが開幕から登板し20勝、あるいはバッターなら40本塁打とでもいいましょうか。
ちなみに藤井四段の現在のクラスはC級2組で、毎年昇格していってもA級になり名人に挑戦するには最短で5年かかるとのことで、トップ棋士との対戦がたくさん見られないのは残念ですが、現在勝ち進んでいる竜王戦では可能性があります。
竜王戦トーナメントでは、一度奨励会で敗れている佐々木五段やタイトルホルダーの久保王将、そして将棋界のレジェンド羽生三冠を倒してようやく、現タイトルホルダーの渡辺明竜王に挑戦することができます。
藤井四段にとっては長い道のりだけど、なんとか勝って伝説を作ってほしいものです。
【考察】須藤凜々花結婚騒動がここまで大きくなった背景
AKB選抜総選挙にてMNBの須藤凜々花(すどうりりか)さんが結婚発表したニュースと、それに関連した芸能人の発言や週刊誌の動向が世間を賑わせています。何か珍しいことのように感じたので、騒動が広がった背景を考えてみました。
騒動の内容は上記のように、恋愛禁止であるアイドルにも関わらず突然の結婚発表をしたことはもちろんだが、TV中継もされた大舞台での発表ということで特に注目を集めた模様。
加えて、選抜総選挙がファンのCD購入により順位が決まるために、須藤さんを応援するためにお金を使ったファンの反応等も注目されています。
今回これだけ大きな騒動に至ったのにはどんな理由が考えられるでしょうか?下記3つの理由を推察しました。
①アイドル本人が直接結婚発表をしたこと
アイドルの結婚報告は昔からありましたが、その多くはマスコミの発表を通じたものでありました。もちろん中には、自ら発表した場合もありましたが、それでも第一報はFAX等で事務所発表やブログなどを通じた間接的な報告が主だった印象があります。
そんな中、須藤さんは本人の口から直接発表したことに、大きなインパクトがあったのではないかと思います。しかも編集番組ではない生中継での言葉であり、事前にもその情報が出回ってはいなかったために、大きな反響になったのでしょうね。
そして、須藤さんはその場で全ての詳細は語ることなく後日話すとしたところにも、様々な憶測を呼ぶことになり、噂やニュースが乱発されたこともあります。
②ファンがお金をかけて立たせた舞台(総選挙)だったこと
ファンがCDを買った結果の晴れ舞台だったために、そのファンに対する裏切りであるとの見方が広まり、ファンの気持ちや動向を気にかける人が大勢いました。今も昔もアイドルというものはファンあってこそであり、その関係性は断ち切ることができない相互的なものです。ファンはCDやグッズの購入を通じて応援を続け、アイドルは感謝やイベント、発信する言葉や行動でこれに応えます。今回の発表はその関係性を壊す行為と捉えられました。
また、世間の意識として「アイドル=光、ファン=影の存在」のところもあるんじゃないかなと。ファンとはオタクに連想されるようなマイナスイメージを纏った存在なので、あまり注目されることはないのですが、今回は「光」であるアイドルのイメージが損なわれたことで、その影にも光が当たっている、言うなれば負のイメージの逆転が起きている状況なのかも。
③多くのAKBメンバーや芸能人の動向に注目が集まったこと
関連するAKBのメンバーやそれ以外の芸能人たちのコメントにも注目が集まりました。とりわけ、AKB各団体のメンバーや卒業生の反応が取り上げられ、その多くが著名人であったことも一因でしょう。通常の芸能人のスキャンダルでは、それに対して発言する著名人(ご意見番)は「さんま、和田アキ子、北野武、松本人志、有吉」など決まった人の反応が取り上げられることが多いのですが、今回はそこに加えてAKBメンバーが加わったことで、ますます拡散していきました。
拡散力のある発信源の数が多くなったこともポイントでしょうね。
というわけで、直感的に当たり前のことしか書いていないですが、上記のような要因で須藤凜々花さんの結婚発表騒動が大きくなったのかなと思います。
また、総選挙もマンネリ化する中でのサプライズとして予め企画されたもの、との噂もありますが、仕組まれたものにせよ須藤さん個人の判断によるものにせよ、世間からの注目をAKBに集め続けるシステムが実によく機能していますね。
モノにせよサービスにせよ、一度形作られたブランドは初めは売れていても、新しいニュースや革新がないと次第に廃れていきます。定期的に新しい価値を提案し続け成長していくことで、長年続く強いブランドなっていくのですが、AKBグループはこのようにブランドの再活性化とでもいうべき、付加価値をつけることにとても長けているなと感じました。
痴漢冤罪保険と電車での経験とトラブル内外
【痴漢冤罪保険】
先日いろんな保険の中で見つけ、最近登録者数が増えている「男を守る弁護士保険、女を守る弁護士保険(痴漢冤罪ヘルプコール付き弁護士費用保険賠償保険セット)」に関連して。
最初にこれを聞いた時には、痴漢冤罪や痴漢被害そのものに対する、金銭的な補償かなと思っていたのですが、よく内容を見てみると痴漢が起きた時に弁護士に対する相談電話や冤罪の際の弁護士費用の補償が付いている保険ということです。損害賠償としては日常生活での交通事故や、水漏れ、物損事故なんかが補償される模様。
月々590円なのですが、加入者も急増しているとのこと。
痴漢冤罪は昨今、線路に逃げ出したり冤罪があったり、それをテーマにした作品も世に出回っておりまさに社会問題化の様相を呈しています。
男性の筆者としては、自分に何かあった時にすぐに弁護士に相談できるのは、気持ちを落ち着かせる意味でもありがたく、すぐに第三者に入ってもらうことで冤罪になりそうな場合は客観的な目線をいれてくれるのは良いところだなと思いましたが、具体的にどんなアドバイスがあるのかは気になるところ。。
【電車での経験とトラブルの内と外】
痴漢といえば思い出すのは、学生時代に乗っていた車両の離れたところで突然、「この人痴漢です」と女性から申し出がありました。よくみると痴漢をしたと思われる男性の手を握り上にあげているのですが、驚いたことに周りにいた大人たちは誰も何も反応しません。「誰か助けてください」と再度女性は声を出しますが、それでも誰も声をかける様子はありませんでした。ちょうど夕方の帰宅時間頃で仕事で疲れたサラリーマンが多かったこともあったのでしょうが、あまりにも反応しない車内に見かね、友人と一緒にいたので私達はその女性の場所まで移動して「大丈夫ですか?」と声をかけることに。
結果的に女性もその男性も含め一緒に次の駅で降り、目撃者として警察に同行することになったのですが、駅を降りてから警察署を出るまでに3時間くらいかかった記憶があります。
その時感じたのは、東京の冷たさといいますか、初めは人々の無関心さと面倒ごとには関わりたくないという態度に驚きを覚えたと同時に、終わってみると確かに時間がかかって大変でした。
当時は学生だったのでまだ時間的余裕があったのですが、社会人として忙しく働きながら目の前の関係ない他人にわざわざ接してトラブルに巻き込まれるのはゴメンだとする気持ちが今ではよく理解できます。
それでも、近くにいる人を助けたり何かしてあげたいという気持ちは、多少なりとも持っている人が多いはずなのでその気持ちを表現できたら良いのですが、現実はそうもうまくいかず。。誰かが何とかしてくれるだろうと。。
ある意味、今回のこの痴漢冤罪保険もそうしたトラブルに関わる人とその周囲の人の不安が形に現れたものとも理解できるのではと思いました。「誰か何とかしてくれるだろう」の、「誰か」の部分を商品にすることで、もちろん「トラブル内」にいる人にとっては安心だし、周りにいる「トラブル外」の人達にとっては関わらなくても「トラブル内」で解決してくれるので自分は気を遣う必要はなくなるからです。
ただ、そうは言っても「トラブル外」の人達が果たす役割も重要であり、特に初動のところで当事者だけで放っておくと被害や精神的側面でのダメージが広がっていってしまうリスクもあります。そんな時に最初だけでも勇気を出して声をかけたり、関わってみたりすることで、当事者にとって救われたりよくなったりするケースは沢山あるかと。(もちろん、関わったことで更に悪化したり自分も被害を受けたりする恐れもあるので、本当に勇気がいることです)
関わる事へのメリット??として、もちろん感謝されたり無事に解決して嬉しいというのもあるのですが、その出来事は後々自分にとって深く印象に残ります。少なくとも私にとっては、記憶の中で強い印象を持っていて、それだけ日常で体験しない特殊な行動だったのだろうなと。(大げさに言えば人を成長させる体験)
なので、余裕のある時はトラブルの外から少しだけ内に呼びかけてみるのも悪くないのでは。。